日記の看板・冬
当庵主人の日記です。


■袂をしばく(2002.1.14)

 今日はお茶のお教室の新年会で、着物を着ました。
 落語ファンが着物を着ると、ついついやってしまうのがアレです。
 「ひっぱりな!」といいながら袂をバシっとしばくあの所作。
 「時うどん」で、きーやんに袖を引っ張られたせーやんがやるヤツですがな。
 あれって難しいですよねぇ。まず音が出ないし、後ろに本当に人がいるように見えないわ。
 やっぱり落語家さんって、鏡を見ながら一生懸命で袂をしばく練習をしていらっしゃるのかな。
 想像すると、なんか面白い。

 あ、それから。
 朝、テレビをつけると小米朝さんが出ていた。すっごくかわいい女の子と一緒に、淀川から琵琶湖まで旅するという特番で、落語のエピソードもたくさん出てきた。出かける準備をしながら見ていたので、じっくり腰を据えてみることはできなかったけれど、それでもとてもおもしろかった。
 小米朝さんが淀川下りをしているの見てついつい「いいなぁ、私もやってみたい」とつぶやいたら、それを聞いていたうちの父。
「やめとき、臭いで」
 ………だからぁ、なんでそういう情緒のないことを言うかなぁ……。
 でも、アクアライナーでいいから川下りやってみたい。もちろんガイドに落語家さん雇って。
 どっかの旅行会社、そんなツアーを企画してくれないかなぁ?

■桂こごろう独演会(2002.1.13)

 思い起こせば去年の喜丸さんの会の後だった。ご本人をドキドキしながら呼び止めて、ちかちゃんと二人して前売を購入し、顔を見合わせてほくほくと笑ったのだった。あれは去年の11月2日のこと。そうそれはまだ秋だったのです……。
 本当に長かった!待ちかねました!
 桂こごろうさん、初の独演会!in 国立文楽劇場小ホール!
 ぱちぱちぱち。
 うれしがりの私「差し入れしちゃおう!!」と、駅前のお気に入りのケーキ屋さんで菓子折りなんぞを買い込んで、どれにしようか迷ってちかちゃんとの約束に遅刻。
 しかし、そこまでして買ったのに、楽屋に行ったら、ずらーっと人が並んでいるのを見て、自分の差し入れの貧弱さに恐れをなし、思わず目に止まった「紅雀・雀喜」お二人の楽屋に置いて帰ってしまいました。……ミーハーな私、男前な紅雀さんと雀喜さんの楽屋を覗ける、という誘惑に足がふらついた、と言いたければ言ってもよくってよ。フン。
 しかも、そこには大好きな笑福亭たまさんが手伝いに来ていらしてラッキー×2。
 ただ、私、たまさんのPCをウィルスに感染させてしまったみたいで、お顔を見て「あ、謝らなきゃ!」と思ったのだけれども、……たまさんって、黙っていらしても威厳があって、気弱な私はすっかり萎縮。なにも言えなかった。落語会にもホームページにも出入り禁止を言い渡されたらどうしよう(T_T)
 で、二番太鼓の途中で気がついた「………あれ?さっき紅雀さん、羽織着てはったなぁ……」そうなんです。晴れの舞台だからなのか、開口一番だけど、薄い紫地に横縞柄の、着物とお揃いのきれいな羽織を着けた紅雀さん、演目は「いらち俥」
 今年も懲りずに紅雀さんのおっかけの私。これが私の2002年の紅雀始めでした。
 マクラも調子よく、ネタも調子よく。気のせいかしら?この方、年の近いお兄さんの会の方が出来がいいような気がする。
 続いて、こごろうさん登場!出て来た瞬間思わず吹き出す。
 だって、紫の艶やかな色紋付にでっかいでっかい羽織の紐は、朱の混じった鬱金!思わずちかちゃんがつぶやいた。
「お坊さんみたい………」いい得て妙。
 マクラはこの独演会開催にあたってのエピソード、そして師匠である南光さんの話、おもろすぎ!そして「向こう付け」、このネタこんなに面白いと思ったの初めて!すでにお腹が痛い!
 雀喜さん、薄青の色紋付。ネタは「うなぎや」。こごろうさんとの仲良し話のマクラから入って、ほのぼのと無邪気なアホがかわいい、うなぎやのおやっさんも困った顔がおもしろい。
 こごろうさん「高津の富」。衣装は何度か見たことのある燕紫っぽい色紋付、よくお似合い。
 いやー、これは何と文章にしたらいいのか!うぷぷぷ。「えべっさんのあほ」って……(抱腹絶倒)目を剥いた顔とか身ぶりとか、もうたまりません!
 ほんまにおもろい!お腹が苦しい苦しい!たっぷり食べてきたのに、あんまり笑って腹筋使い過ぎて、私のお腹がぐーぐー鳴りはじめて、冷や汗。でも、周りからも鳴ってる音が聞こえて来た。みんな一緒やねんね(笑)
 中入でトイレに行ったら、並んでいるお客さんの口元がみんなちょっとゆるんでいた。前に並んでいた奥さんと、まったく見ず知らずなのに「こごろうさんって、本当におもしろいですよね!」と思わずしゃべってしまった。知らない人とも喋れちゃう、まさに「こごろうマジック」やわ。
 中入後、「べかこ浴衣」のこごろうさんと團朝さんが舞台に登場。「米朝事務所いちおし独演会」の宣伝。通し券を買ったらカレンダーをもらえるという話に、思わずちかちゃんと「ええっ!?」と色めき立つと、となりに座ったおじさんが「こんなんやでー」と見せてくださった。似顔絵つきでめっちゃかわいい!もっと早く見せて〜な!さすがに今からは買えないよ〜(泣)
 そして本日最後の演目は「野崎詣り」。……真っ赤な色紋付にこれまたでっかい羽織の紐。南光さんに帯をもらったと、マクラでおっしゃっていたというのはこれなのかな?ぴしーっとしたきれいな紺の帯。
 初めて会った時にちかちゃんに「誰のどのネタが好き」と聞くと、迷わず「こごろうさんの野崎詣り!」という答が帰ってきた。その笑顔がとてもうらやましくて、今日がとても楽しみだったのです。
 なるほど、わかるわ〜。なんだか私も、野崎の観音さんにお詣りするため、堤をウキウキ歩いているような気分。こんなウキウキ感って、しばらく味わっていませんでした。本当に楽しい。
 幕が降りたあと、アンケートを書く手が震えました。でも、その時流れていた「今日はたくさん笑った〜♪」っていう曲、めっちゃおかしかった。会の余韻があるから尚更笑えて仕方がなかったです。
 で!ロビーでお見送りして下さったこごろうさんと写真を撮ってもらってしまいました。しかも、こごろうさんに「さの字庵って○○さん(私の本名)ですよね。似顔絵描いてもらって……」と言ってもらいました!きゃぁぁぁぁぁ!「失礼なこと書き倒してすみません!」と思わず謝ったけれど、笑顔で「どうぞどうぞ!」と言ってもらえた。なんてええお人や!これからも贔屓にさせてもらいまっせ〜!
 本当に楽しい会でした。ちかちゃんと晩ご飯食べながら、5時間もへらへら笑いが止まらなかった。本当に美味な落語をごちそうさまでした。満足満足!(しかし、今日の日記も長いなぁ)

■ストレスは女を過食に走らせる(2002.1.12)

 今日はどの落語会にも行かなかった。
 と、いうか、行けなかった。母の吊った腕を見たら、やっぱり家のことをしないわけにはいかないし。ああ結婚はめっちゃしたいけれど、もしも結婚したら、毎日こんな気分なのかも。
 「住まいのミュージアム寄席」が始まる時間にはお皿を洗っていました。
 あ〜、今頃二番太鼓?お囃子は生かな?出丸さん笛が上手やから、さぞかしかっこいいのが聴けたやろうなぁ……。そして今頃「口入屋」始まったかな?という時間に布団取り入れながらため息。ついついチョコレートに手が伸びる。危うく一箱いってしまうところ。危ない危ない。
 で、「いたみ寄席」が始まった時間には家族で焼肉食べに行ってました。
 あ〜、今頃「石段」で紅雀さん登場かしら………と思うと、なんかマジ泣きそうになってしまった。だって凄いメンバーじゃないの、今日の「いたみ寄席」!私ってバカ、こんな思いするんやったら、家族のブーイングにも負けずに出かければよかった。
 そういう満たされない思いでご飯食べるとダメですな。モノが焼肉だけにカロリ−高いのに、もう止まらない。
 落語通いするようになってから、何もしないのに体重が自然に減ったのは、落語にめっちゃヒ−リング効果があったからなんだと、つくづく思う。心が満たされていたら、そんなに食べなくても幸せでいられる。
 私、ストレス溜まると昔から周りがひいてしまう程食べる。胃袋がめっちゃ頑丈なのも、こういう時は裏目。どんどん食べ物が入って、どんどん消化してしまう。それを証拠に、締めにビビンバまで食べたのに、もうなんか食べたい。恐ろしや私の胃袋。
 でもでも、今日のガマンは明日こごろうさんの独演会に行くためのものなの。
 明日は誰にも文句は言わせないもん。笑顔で出かけて笑顔で帰るの。
 ああ、今日は早く寝ようと思っていたのに、ひもじくて眠れない。
 ……ほんま、つらいわ。

■電車風景(2002.1.10)

 今日の帰宅途中の電車の中で出会った変な人。
 お腹すいたなー、くたびれたな−、なんて、揺れる私の頭の真後ろで、ぼそぼそと歌声。
 「変なのー、電車の中で歌ってはるぅ。あやしー」  始めはぼーっと聞いていましたが、なんか妙な感じ。あまりに声が近すぎる。
 振り返ると、年齢のよくわからない男性が、思いっきり私を凝視しながら小声でオリジナルとおぼしき歌を口ずさんでらっしゃる。あきらかに私めがけて!
 振り返ったことをめっちゃ後悔しました。気付かなければよかった。まるでフカに魅ぃ入れられた巡礼の娘の気分。駅に着いてから、めっちゃ早足で家に帰りました。あーん、怖かったよぉ。

 まったく電車って、いろんなことが起こる。
 そういえば、こんなこともあった。またまた帰宅途中、エラ混みの車内に六代目ばりの怒声が響き渡った。
「ええかげんにさらせよ!ペラペラペラペラと!迷惑行為やろが!アナウンスで注意しとるやろ?!何を考えとるねん!切りさらせ!」
 おっちゃん、座席で堂々と携帯電話でしゃべっていた女の子にキレたらしい。ひょっとしてお酒が入っていたんやろうか、舌のもつれた感じが尚更松鶴チック。なんかちょっとうれしい。おっちゃんおっとこ前!
 人が多すぎて、二人の顔は見えなかったけれど、声はよく聞こえた。怒鳴られた女の子は、めっちゃ冷静な声で、
「今ちょっとまずいから、後で」
と言って、電話を切った様子だった。根性すわってるな−、もし言われたの私やったら、多分泣くで、あれ。

   で、土曜日の夕方に千里中央行きに乗ると時々出会うおもしろいおばさんがいる。
 痩せていてお水系の格好していて、アクセサリーいっぱいつけまくった元美人風。
 隙を見せると、まるで友達のようにえらい勢いで話し掛けてくる(しかも声でかい)。初めて遭遇した時には母と一緒だったので、ずーっと母の知り合いやと思ってました。
 このおばちゃん、トークのきっかけを作るのがめっちゃ上手い。こちらが紙袋ぶらさげていたら「買い物行ってたん、何買ったん?」とか「いやー、混んでるけど座れてよかったわ」とか、極めてナチュラル。ついつい受け答えしてしまったが最後、電車を降りるまで離してくれない。ずーっとずーっと喋り続ける。私、あんたのこと知らんっちゅーねん!今まで3回ほど遭遇しました。高校生の女の子がクスクス笑って見ていたので、きっと名物になってはるんやろうなぁ。

 世の中いろんな人がいてはりますなぁ。

 で、私の場合、あえて電車の中で怪しい本を読むのが好き。例えば江戸川乱歩のエゲツナ系(芋虫とか)澁澤龍彦とか、倉橋由美子とか。「フフ、この周りの人たちは、私がこーんな本読んでるとは、夢にも思うまい……」なーんて想像するのがたまらなくイイんです。ぜひ一度お試しを。
 でも最近は、落語のクイズを考えながら「フフ、この周りの人たちは、私がこんなことを考えているとは夢にも思うまい……」とほくそ笑んでることの方が多い。ちなみにクロスワードパズルも電車の中で作りました。適度な刺激って、生活には必要よね。

■もー、お父さんったら(2002.1.8)

 今日はちょっと、グチります。

 うちの父はめっちゃ負けず嫌いです。
 一緒にクイズ番組を見ていて、私が先に答えを言うとめっちゃ怒る。逆に自分が先にわかった時は、憎たらしいほどうれしそう。
 おもしろい時事ネタや本を、私がすでに知っていても怒ります。
「そういう時は知っていても、知らんと言え!お父さんをたてろ!」
 そんな困った性情は、あらゆる場面において首をもたげます。

 正月早々、うちの母が帰省先でケガをしました。伊予柑を収穫中に転んで手首の骨にヒビをいかせてしまったのです。
 利き腕だし、当然家事ができません。こういう時、夫なら「大丈夫。家のことは気にせんと、ゆっくり養生しろや」と優しくするのが普通のはず。そうですよね?
 しかし、うちの父は違います。
 不機嫌丸出しで「お父さんかて、腰がめっちゃ痛い、痛い、痛い!」
 ……おとん、そんなことを張り合ってどないすんねん!
 父の大人気ない態度に、母は「こんな冷たい人やと思ってなかった!もっぺん田舎に帰る!」と泣き出すわ、父はムクレるわ、私は笑うわ。
 誤解のないように言っておきますが、普段の父は家事をよく手伝うマメでとっても心優しい人です。
 ただ、ケガ人の母が自分よりかわいそうで、大事にされているのが気にくわないだけなんです。
 まったく、どんならんな〜。

 1/19はそんな困ったちゃんの父と笑福亭松喬さんを聞きに行きます。
 そう、以前日記に書いたハガキが当ったのです。しかも三枚も。うふ。
 19日までに機嫌が直れば母も一緒のはず。
 しかしどうかなぁ。なにしろうちの母の執念深さは「七度狐」級やもんなぁ。なにしろ30年以上前に、飲みに行ったお店で、父が自分のことを放ったらかして、他の女の人の機嫌ばっかりをとっていたことを、いまだにネに持ってるらしいし。
 間に立った私、気分は「子は鎹」。
 家事はせんならんわ、双方の機嫌はとらないかんわ。なんて可哀想なの。
 一番不幸なのは、母の負傷のおかげで当分思い通りに落語に行けないこの私。このツケは返してもらうわ。
 だって負けず嫌いと執念深いのは遺伝なんやもん。

■歌々志の会(2002.1.6)

 二日連続落語です。
 今日は、歌々志さんの会 in 気楽堂。
 本当なら、歌之助一門会だったはずのこの会。気楽堂へ向かう心は、ちかちゃんと二人してなんだかメランコリック&センチメンタル。
 会場は大入りでした。ちょっと早めに行ってよかったぁ。
 演者・演目は次の通り、
  喬若さん「牛ほめ」
  歌々志さん「骨つり」
  米輔師「けんげしゃ茶屋」
  歌々志さん「はなしか入門」
 喬若さんは、かわいいお顔やけれど、しっかりと暑苦しい(……すみません)笑福亭の表情・口ぶりでその落差がおもしろい。
 米輔師は遊びの過ぎるダンナをとてもかわいくやってくれはった。接客業であんな絡み方されたら、さぞかしムカつくやろうに、なんだか全然嫌みがなくて、素直に笑いました。
 歌々志さん、まずは古典の「骨つり」、前に亥会で聴いた時も、さんざんよがらされたネタ、今日はもっとおもしろかった。口調はしっかりきっちりなのに、斬新なアクション&顔の筋肉を駆使したおもろい表情炸裂しまくりで、お腹抱えて笑いまくっちゃいました。
 はなしか入門は、噺が始まった瞬間から、ちかちゃんくすくす笑い。私もへらへら笑い。
 まじめに苦悩する若い噺家さんがコミカル。歌々志さんて、この真面目さがとってもキテレツで面白い!とっても苦しいくらい。すきっ腹で笑い過ぎると、目の前に火花が散るということを、今日初めて知りました。
 歌之助師匠が亡くなったばかりだから、やはり、マクラでは師匠の思い出話。歌々志さんほのぼの笑顔。本当に優しくてかわいい方だったんだなぁ……。
 続いて抽選会。なぜか出番がないのに衣装着用の男前な米吉さん登場。歌々志さんとの掛け合いがとっても面白い。当たり番号読み上げる声が役者口調で、秘かにウケまくった私。
 で!!私、子の1368番で見事歌々志さんのサインをゲットしました!やったぁ!!
 うれし〜。なんかついてるわ。やっぱり気楽堂さんに行く時には、「厄払い」じゃないけど大きい鞄で行かなきゃね。ふふふ。
 るんるん気分で晩ご飯。茶わん蒸しおいしかった。
 ダッシュで終電にかろうじて間に合い、お風呂から上がって、「米朝一門顔見世興行」を見ながらバカ笑いしています。
 で、ファンとしては心から思う。
 よかった、紅雀さんがパラパラチームじゃなくって。(しみじみ)

 そして、ふと現実に帰ると明日から仕事な私。あぁぁぁぁ、朝起きられるかなぁ?

■枝雀一門会(2002.1.5)

 今日はほんとに冷えますねぇ。そんな寒風吹きすさぶ中、京都はアバンティ・ホールでの枝雀一門会に出かけて参りました。事情があって、和服でよちよちと歩いて行きました。恥ずかしかったけど、実は一回やってみたかったので、念願叶ったということで、ちょっとご機嫌。
 でも、着物って、あれこれ巻いてるせいかとっても暖かいんですね。こんな日にはかえってよかったかも。
 当日の演者・演目です。
  こごろうさん「つる」
  雀々さん「正月丁稚」
  雀松さん「片棒」
   中入
  む雀さん「三味線あらかると」
  南光さん「不動坊」
  大喜利 司会雀松さん、雀三郎さん・九雀さん・雀喜さん・紅雀さん・雀々さん(下手からの並び順)

 内容は、これがおもしろくないはずがないので、あんまり書かんときます。ふふふふ、うらやましがりやがれ。
 でね、前から思っていたのですが、枝雀一門て、本当に色とりどり。全然キャラがかぶっていない!で、みなさん、噺家になるために生まれて来た人ばっかり、という感じ。
 もちろんテレビとかラジオのお仕事してはったり、三味線とか日舞やってはったりクラリネット吹いてはったり、お家に帰ったら旦那さんでお父さんだったりするわけで。もちろんそういうのは知っているんだけど。
 どうも、高座から降りたら、とたんに電源切られて米朝事務所の倉庫にしまわれているような感じがして仕方がないんです。
 もしくは、米朝事務所所有の牧場で放し飼いにされていて、落語会がある時だけ運搬車に乗っけられてやってくるような……。そう、まるで高速道路で時々出会う競走馬のように「噺家運搬中」って書いたトラックに乗せられて「んんんん〜、今日は、いったいどこ行くの〜?」って、檻から顔を出してキョロキョロしてる感じ。
 ……これってかなり失礼やんね。
 いや、皆様、噺家になってくださってよかった。おかげでこれだけ楽しい気分にさせてもらえるわけで、私は幸せです。
 で、行けなかった人に会の様子を……。ちょっとだけよん。
 こごろうさんの「つる」は時間もたっぷりで工夫もたっぷり!
 雀々さんは枝雀師匠が存命だったころの米朝一門の新年会の内部事情をこそっと、マクラでやってくれたり、それこそ珍獣的な定吉っとんがめちゃラブリー。
 雀松さんは、歌舞伎や各方面の声色・身ぶりなどなど、技のデパ−ト振りをたっぷり見せてくれた。
 む雀さんは弦がブチ切れるほどの大熱演。三味線であんなこともできちゃうのか〜。ふんふん。
 南光さんは目の前に情景が浮かんでくるようなリアルさ。前にすっごっく面白い!と思ったNHKで同じネタを見た時より、もっともっとよかった!
 で、大喜利。ほがらかにあったかく笑わせてもらいました。紅雀さんをイジる雀々さん、思わぬ師弟の微妙な関係を見せてくれた雀三郎さん&雀喜さん、歌がうまくて相変わらずソツのない九雀さん、名司会時々迷司会の雀松さん、いやーほんまほのぼのした一門やわ。みなさん大好き。
 ちょっと値段は高いけど、行ってよかったぁ。会場も落語をやるホールとしては、ほどよい広さでした。
 さ、早く寝て明日の気楽堂での歌々志さんの会に備えましょう。で、歌々志さんを見終わったら日常が帰ってくる。長かった私のお正月休み、いよいよ明日が千秋楽です。

■お通夜(2002.1.3)

 歌之助師匠のお通夜にこっそり行って来ました。
 時間が遅かったこともあって、会場にはいろんな噺家さんがいらしていました。
 わざわざ記帳するのもおこがましくて赤面、手が震える。
 親密な空気を思いっきり邪魔をしている、恥ずかしくてまったく顔をあげられず。すみません、ちょっと待って下さいね、ちょっとだけ私にもお別れ言わせてね、という気分。やっとのことでお焼香を済ませて来ました。
 会場を出た後、ご飯を食べながら、女三人でそれぞれが聴いた歌之助師匠のネタなど、思い出話しをする。
 会場は私の家の近くなので、電車に乗るお二人を見送った後、寒さに震えながら歩いて帰宅。
 こういう時に寒いのは本当に嫌。さみしさ悲しさ悔しさ、倍になる気がする。

■米朝独演会(2002.1.2)

 どうしてもあきらめきれずに、行ってしまいました。最後の国宝師匠のサンケイホールでの独演会。
 もちろん、急に思い立ったところで席が取れるはずもなく、12:30から並んで立ち見。
 でもね、いいこともあったんです。
 立ち位置がよくって、並んでいる最中に桂九雀さんが和服姿にインバネス+帽子で歩いていらっしゃるのを目撃したり、
 こごろうさん・雀喜さん・紅雀さんの三色だんごトリオがスーツで三人お揃いで歩いてはるのを目撃したり、
 とどめに、でっかいカメラをたすきがけにした雀松さんまで見てしまった。眼福、眼福!
 オ−ルナイト落語会で、ジッと同じ姿勢でいたせいで、腰が痛かったのだけれど、ふんばって立ち続けました!
 まずは「餅屋問答」私はずいぶん久し振りの出丸さん。こういう大きいステージにめっちゃ映えます。 ええ男やわぁ。まともにやったら、やや長めなこのネタを、短時間に無理なく納めてしまうの、すごい。
 続いて米平さん「つる」、新春らしくほのぼのゆったり。
 雀々さん「花ねじ」、大好きなネタ!「となりの桜」という名前の時もありますよね?この境界って、なんなんだろう。とにかく出ていらした瞬間から盛り上がる盛り上がる!ええわぁ、大好き!
 お待ちかね米朝師匠「帯久」袴で登場!これは子供の頃に、図書館のテープで聞いて大好きだったネタ。生で聴けて感激。
 中入後、新春に相応しく華やかな米八さんの曲独楽。そしてトリの「厄払い」
 明日も同じ番組なので、見に行く方のためにぐっと我慢して書いています。
 並んでずーっと立っていた甲斐がありました。体がほっこりあったまる感じの会でした。
 しかも、その後の飲み会………。ふふふふ。楽しかった!

 でも、その飲み会の最中に、歌之助師匠の訃報を聞き、まだ信じられない心地です。
 どうして!?そんなに急いで連れていくことないやないの!聴きたいネタいっぱいあるのに!
 今日ばかりは、落語の神様を恨みます。

■「年越しオールナイト落語会」(2002.1.1)

 明けましておめでとうございます。
 2002年最初の日記に落語会のレポートが出来ることを幸せに思います。
 早速ですが、行って参りました!「年越しオールナイト落語会」in 茶臼山舞台!
 座椅子を持って来た用意のいいお客さまもいらっしゃった。後で聞くと遠くはイギリス(里帰り中?)とか横須賀とか東京からいらした方もいたみたい。みなさま熱が入っています。
 20:00開演。幕前であやめさんと月亭遊方さんがご挨拶。この時点でお客さまは、普段の茶臼山よりちょっと多いかな?という感じ。
 巳年の干支落語、桂福矢さん「延陽伯」、笑福亭生喬さん「うなぎや」、すっごい着物の月亭遊方さん「?」、林家小染さん「蛇の災難」(猫が蛇に変わってたんですが……)みなさん噺に無理矢理蛇を登場させていました。その力技がめっちゃ面白かった。
 「コントくっしゃみ講釈」ぼけぼけ喜六・桂福矢さん、しっかりもん清八・林家小染さん、後藤一山・旭堂南湖さん(すごい!本物の講釈師!)、八百屋のおっさん・林家染語樓さん(すでに酔っている)、美女おもよ・林家染雀さん(笑)

 ……みなさん、唐辛子をくすべるのは絶対にやめましょう。落語で聞くより百倍すごい威力です。なにしろ一時進行を中止してお客さんが会場から待避するハメになったんですから。
 この辺りから膝送りに次ぐ膝送りで、これ以上詰め込みようもないほどの人・人・人!何人入っていたんやろう?身動きするのがしんどいくらいでした。
 在日関西人のみなさんの芸と大喜利(ジパング上陸作戦、笑福亭伯鶴さん、ダイアン・オレットさん、趙博さん)
 お笑いお茶席入門。茶臼山舞台の高座、実はお茶室用のものだったということが判明(笑)釜も切ってある!お薄を一服と釣鐘饅頭をおいしく頂戴しました。
 唐辛子騒動で時間が押しまくって慌ただしく舞台転換し、カウントダウン。クラッカーでお祝い(お客さまのどなたかが持ってきて配って下さったみたい)そのままヒロポンズ・ハイ(初体験!)のライブへ流れ込む!
 「ジョニー・B・グッド」、「上方落語ハッピーソング」、アンコール「雨上がりの夜空に」
 福笑さん、歌も最高です。寿限無でこぶし突き上げたり、手を叩きまくって喜んで、気が付いたら自分の指輪でケガしてました。新春からエキサイトしすぎのさの字でございます。
 スペシャルゲスト、天王寺の歌姫・衣笠まこさん。(←名前不確か)でっかいアコーディオンを巧みに操り、かわいい歌声!うれしいシークレットゲストでした。
 午年の干支落語、旭堂南湖さん(講談)「難波戦記から『般若寺の焼き打ち』(←この題名あいまいです)」、桂あやめさん「厩火事」、笑福亭岐代松さん「馬の田楽」、林家染語樓さん「?」そろそろ時間は2時。だんだんと意識が遠のいていくのだけど、演者さんの巧みな芸のおかげでなんとか起きているという状態。
 オムニバスコント、(桂三風さん、淀屋萬月さん、月亭遊方さん+ゲストであやめさん)
 「丑三つに福笑!」のコーナー、まずは私のお気に入り笑福亭たまさん南京玉すだれ+物真似(BGMはまこさん)衣装はちょいちょい着てらっしゃる赤いお着物、それだけでも派手なのに、襟が乱れてもろに見えた襦袢はもっと派手で、なんかすごいおもしろかった。
 姉様キングス(初体験・感激!)、桂小福さん(物凄い芸をしてくれたのですが、部外秘と言われたので沈黙します)そして福笑さん!「念頭のご挨拶(新作じゃありません)」
 そして「お年玉争奪クイズ合戦」これは、許可があったのでデジカメの残り少ないバッテリーを駆使して撮りまくったのですが、……これってホームページにアップしてもいいのでしょうか?だれか教えて〜。
 もっといっぱいかきたいこともあるのだけれど、この辺にしておきます。書いてはいけないことがたくさんあるので、うっかり筆をすべらせた大変なことになっちゃう(笑)
 最高に楽しかった!今年もよい年になりそうな予感。
 ではでは、みなさま、今年もよろしくお願い致します。

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